病態図鑑

甲状腺中毒症

作られているのか、漏れているのか

甲状腺中毒症 — ホルモンが「作られている」のか「漏れている」のか 甲状腺濾胞を2つ並べた図。上は自己抗体がTSH受容体を刺激し、ヨードを取り込んで新しくホルモンを作り続けている状態。下は濾胞が壊れ、コロイドに貯めてあったホルモンが血中へ流れ出している状態で、細胞が壊れているのでヨードは取り込めない。血液検査ではどちらもTSHが下がりFT4が上がるが、ヨードの取り込みは逆向きになる。 甲状腺中毒症 — 作られているのか、漏れているのか 血液検査はどちらもTSH低値・FT4高値で同じ顔をする. 分かれ目は「濾胞がまだ働いているか」. A 刺激されて作り続けている コロイド (Tgに結合した貯蔵) TRAb 受容体を刺激 ヨード 取り込み ↑ T4・T3 を作り続ける B 壊れて中身が漏れている 壊れた濾胞 貯蔵分が 一気に出る Tgも一緒に 細胞が壊れている → ヨードを取り込めない A・Bは別の病態で、進行の段階ではない. A 作りすぎ(Basedow病) — 濾胞は元気に働いている TRAbがTSH受容体を刺激 → ヨードを取り込み、新しいホルモンを作り続ける → 放射性ヨード摂取率は上がる。びまん性に腫大し血流も増える 刺激が続くかぎり終わらない。眼症・前脛骨粘液水腫はこの型だけ 合成を止める薬(抗甲状腺薬)が効く —— 止める対象が動いているから 根治は放射性ヨード内用療法か手術。薬は寛解を待つ治療 B 漏れ出し(破壊性) — 濾胞が壊れて貯蔵分が出ている 無痛性甲状腺炎・亜急性甲状腺炎・出産後・ICI関連・アミオダロンのtype 2 など 壊れた細胞はヨードを取り込めない → 摂取率は下がる。Tgは上がる 出せる量に限りがある → 数週〜数か月で自然に収まる 貯蔵を使い切ると一時的に機能低下になり、その後もどる(中毒症→低下→回復) 抗甲状腺薬は効かない —— そもそも合成していない 対症的にβ遮断薬。亜急性甲状腺炎の痛みにはNSAIDs、強ければGC C 外から入っている — 甲状腺は何もしていない 甲状腺ホルモン製剤の過量・自己使用。摂取率は下がり、甲状腺腫もない Bと分けるのはTg —— 濾胞から出たのではないのでTgは低い Bは壊れた濾胞からTgも一緒に出るので上がる。ここが唯一の分かれ目になる 略語 TSH: 甲状腺刺激ホルモン / TRAb: 抗TSH受容体抗体 / FT4: 遊離サイロキシン / T4: サイロキシン / T3: トリヨードサイロニン Tg: サイログロブリン / ICI: 免疫チェックポイント阻害薬 / NSAIDs: 非ステロイド性抗炎症薬 / GC: グルココルチコイド
血液検査はどちらもTSH低値・FT4高値で同じ顔をする。分かれ目は濾胞がまだ働いているかどうかで、働いていればヨードの取り込みは上がり、壊れていれば下がる。
図だけを開く(SVG) 作図 2026-09-11

出典

次の資料を元に作図しました(図表の転載・トレースはしていません). ガイドラインは改訂されるため, 利用にあたっては最新版の確認をお願いします.

  • ガイドライン

    甲状腺疾患診断ガイドライン2024(バセドウ病の診断ガイドライン / 無痛性甲状腺炎の診断ガイドライン / 亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン)

    日本甲状腺学会 / 2024年11月21日改定

    各診断ガイドラインの診断項目: TSH低値・FT4高値は共通, 分かれ目はTRAb/TSAb, 放射性ヨード(またはTc)摂取率の高低, 疼痛の有無と炎症所見

  • 教科書

    カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版 改訂第2版 VIII 内分泌

    日本医事新報社(総編集 坂井建雄・河原克雅) / 改訂第2版(2012)

    甲状腺(誌面552-557): 濾胞の構造, サイログロブリンの合成・ヨウ素化・コロイドへの貯蔵(2〜3か月分)・再取り込みと加水分解, ヨウ素の出納 / TSHの分泌調節と遊離ホルモンの負のフィードバック(誌面557)

  • 教科書

    内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック

    日本内分泌学会・日本糖尿病学会(編) / 診断と治療社 / 初版(2023-05-30)

    Basedow病(誌面115-117) / 亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎(誌面120-122): 破壊性甲状腺炎では濾胞構造の破壊で貯蔵ホルモンが放出され, 抗甲状腺薬は無効 / 甲状腺中毒症の鑑別(誌面143): 機能亢進を伴う(Basedow病タイプ)か伴わない(破壊性甲状腺炎タイプ)か

作図: 病態図鑑(オリジナル). 作図 2026-09-11. 参照時点の版に基づく.