病態図鑑

副腎不全

軸のどこが切れたかで、余るホルモンが変わる

副腎不全 — 軸のどこが切れたかで、余るホルモンが変わる 左は視床下部・下垂体・副腎を簡略化して縦に並べた絵で、上から下へCRH・ACTH・コルチゾールが流れ、コルチゾールが上の2つを抑え返すネガティブフィードバックを破線で描いている。切れうる3か所に番号を置いた。右はその3か所それぞれで何が起こるかを並べたもので、ACTHが上がるか下がるか、球状層のアルドステロンが残るかどうかが分かれ目になる。臓器の地色は装飾で、意味を持つのはカードの色。 副腎不全 — 軸のどこが切れたかで、余るホルモンが変わる 足りないのはどれもコルチゾール. 違うのは「上流のACTHが上がるか下がるか」と「球状層のアルドステロンが残るか」. 視床下部 CRH 下垂体前葉 ACTH 副腎皮質 球状層 → アルドステロン 束状層 → コルチゾール RAA系 球状層はこちらが主 コルチゾール 全身の標的組織 抑え返す ネガティブフィードバック 外から入るGC 1 2 3 縦積みは上流→下流の順序. 番号は「どこが切れるか」で, 重症度の順でも起こる順でもない. 1 副腎皮質そのものが壊れる(原発性・Addison病) 束状層も球状層も同時に失う → コルチゾールとアルドステロンの両方が低下 抑え返すものが無くなる → CRH・ACTHは上がる ACTHはPOMCから切り出される. 同じ前駆体のMSHも増える → 色素沈着 アルドステロンが無い → Naを失いKを溜める → 低Na・高K・循環血漿量の低下 決め手はコルチゾール低値 + ACTH高値。色素沈着と高Kはこの型だけ 2 上流が切れる(続発性=下垂体 / 三次性=視床下部) ACTHが届かない → 束状層だけが働かなくなる → ACTHは低い・色素沈着は出ない 球状層を主に動かしているのはACTHでなくRAA系 → アルドステロンは残る → 高Kにならない。ただし低Naは起こる(コルチゾール欠乏でADHの抑制が外れる) 下垂体の障害なら他の前葉ホルモンの欠損を伴うことがある 3 外から入るステロイドが軸を抑える(医原性) いちばん多い原因 薬のGCが視床下部・下垂体を抑え返す → CRH・ACTHが下がり 副腎は萎縮する 検査の見え方は 2 と同じ(ACTH低・色素沈着なし・Kは正常) 薬を飲んでいる間は足りている。急にやめた時と、感染・手術で需要が増えた時に破綻する 萎縮した副腎が戻るには数か月〜1年かかる。減らすなら時間をかける 略語 CRH: 副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン / ACTH: 副腎皮質刺激ホルモン / POMC: プロオピオメラノコルチン / MSH: メラノサイト刺激ホルモン RAA系: レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系 / ADH: 抗利尿ホルモン / GC: グルココルチコイド / Na: ナトリウム / K: カリウム
足りないのはどれもコルチゾール。違うのは上流のACTHが上がるか下がるかと、球状層のアルドステロンが残るかどうかで、それは視床下部-下垂体-副腎軸のどこが切れたかで決まる。
図だけを開く(SVG) 作図 2026-09-11

出典

次の資料を元に作図しました(図表の転載・トレースはしていません). ガイドラインは改訂されるため, 利用にあたっては最新版の確認をお願いします.

  • ガイドライン

    副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針

    日本内分泌学会・日本小児内分泌学会・日本ステロイドホルモン学会・厚生労働科学研究費補助金政策研究事業「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究」班(合同作成) / 2015(日本内分泌学会雑誌 91巻 Suppl. September: 1-78)

    第1部 副腎不全症概要(p.5-32): 原発性・続発性の病態と診断, 副腎クリーゼ. 英語版 Yanase T, et al. Endocr J 2016;63(9):765-784

  • 教科書

    カラー図解 人体の正常構造と機能 全10巻縮刷版 改訂第2版 VIII 内分泌

    日本医事新報社(総編集 坂井建雄・河原克雅) / 改訂第2版(2012)

    視床下部と下垂体(誌面546-549): CRH-ACTH系, POMCのプロセシング / 副腎(誌面562, 569-570): 皮質の層構造, 束状帯・網状帯はACTH依存で球状帯はACTHの影響が少ない(主要刺激はアンジオテンシンII・高K), コルチゾールの負のフィードバック

  • 教科書

    内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック

    日本内分泌学会・日本糖尿病学会(編) / 診断と治療社 / 初版(2023-05-30)

    副腎皮質機能低下症 Addison病(誌面197-199) / その他の副腎皮質機能低下症(誌面204-206): 原発性と続発性(視床下部・下垂体疾患に伴う)の区別, 医原性を含む

作図: 病態図鑑(オリジナル). 作図 2026-09-11. 参照時点の版に基づく.